若様組まいる

若様組まいる (100周年書き下ろし)
 『アイスクリンつよし』に登場した若様組という巡査たちの、教習時代を描いた学園寮物です。明治時代のたった2か月の「ここはグリーンウッド」。級友の恋に奔走し、試験勉強に悪戦苦闘し、自分の未来を思い悩む青春ものとして、まっすぐな王道でした。
 学園寮物に不可欠なのが個性的な先生ですが、この作品では、幹事一人が圧倒的な存在感を放っています。小泉商会の当主といい、食えない大人が登場することで、長瀬達の世界が広がって見えるのが良かった。この二人、若者たちを教え導こうって気がまるで見えないところがすごくいいと思います。
 相変わらず作り込みの甘いところはあるけれど、でも、この作品に関しては、大きな瑕疵とならず、最後まで面白く読めました、よかった〜。なんかもう、本っ当に惜しい作家さんだよな…。オチがない恩田陸、たまに説教おやじと化す朱川湊人、細部の雑な畠中恵。実在の作家ご本人の性格とはまた別に、その作家が生み出す作品群が持つ傾向を擬人化したら、なんだか欠点も愛せそうな気がしてきた。