アナザー修学旅行

アナザー修学旅行
 さまざまな事情で修学旅行に行けない中学3年生の少年少女の「もうひとつの」修学旅行。修学旅行でクラスメート達がいなくなった教室で、3日間あまり親しくない人たちと過ごさなくてはいけない緊張感とか、微妙な心の距離とかが、丁寧に…しかしあまり痛々しい感じじゃなく描かれていて、とてもさわやかな青春ものでした。
とにかく、状況設定の眼のつけどころが秀逸。学校を舞台にした青春ものだと、クラブ活動が中心になることが多いですが、クラブ活動と違うのは、この関係が期間限定だっていうことですね。「仲間」の誰もが、この関係が3日間だけのものだとわかっている。だけど、その間をなんとか一緒にやりくりしていこうと、それぞれが自分なりに距離を測りながら接していることが、さりげなく、あたたかく描かれているところがいいです。
大枠の設定だけでなくて、秋吉が保健室から出てくる理由づけとか、細かいところにもよく考えられていて、全体にわたっての丁寧な作りにも好感が持てました。
キャラクター作りもうまいです。骨折で偶発的に修学旅行に行けなくなった「普通」の女の子を主人公に据えて、子役タレント、頭のいい不良少年、謎の美少女転校生、学校一のモテ男、女子にも人気のある優しい少女、保健室登校の引きこもり少年と個性豊かな面々が登場。特になにか劇的な事件が起こるわけではないけれども、ちょっとしたゲームやトラブルを、この面子と一緒に体験するのは、なかなか楽しかったです。