愛はさだめ、さだめは死

愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)
 学生時代に読んで、全く歯が立たなかった記憶があるジェームズ・ティプトリー・Jr再挑戦。私に、SFはある程度の基礎知識がなければ、小説として読むことすらできないという懼れを植え付けた作家であります。
 …今回も、ワタシ程度の人生経験では、ティプトリー作品を完全に理解することなど、不可能なのね…と思い知らされました…。「すべての種類のイエス」とか「乙女に映しておぼろげに」なんて、もう何が起こったのかさっぱりわからない。前者は、宇宙人がやってきて、後者は未来人がやって来たのかなーということがぼんやりわかる程度。「アンバージャック」は、起きたことは理解できたけど、オチの意味するところがわからなかった。
 それでも、多少は進歩があって、「楽園の乳」は三読目くらいで、文字の連なりが映像になって見え始め、「恐竜の鼻は夜ひらく」にはくすくす笑え、「男たちの知らない女」に、ティプトリージェンダー作家といわれる所以を見ることができました。何より自分自身に驚いたことには、昔最もわからなかった表題作が、一番面白く感じられたということ! 「そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見出した」もすごく好き。
 
 ところで、よしながふみ『大奥』が、ジェームズ・ティプトリー・Jr賞を受賞したそうですね。徳川幕府の歴史を知らない人間にも、面白く読ませてしまうよしながふみのすごさに、あらためて敬服。そして、『大奥』が英訳されていたことにびっくりした。