ビヨンド・エジソン

ビヨンド・エジソン
 最相葉月のノンフィクションの切り口は、いつだって独特だが、どれも「そうそう、そういうことって知りたかったの」とハッと気づかされるような親しみやすさがある。本作は、現代科学の最前線を担う科学者に、「なぜ科学者になったのか」を影響を受けた一冊の本を核にして問う、というもの。エジソンの伝記を読んで科学者になりました、なんて人はほんとにいるのかなという素朴な疑問から、「科学者」と呼ばれる人たちが、どのようにして科学の道に進んだかを、丁寧に探っていっている。
現代科学の最先端で何が行われているのか、科学者の就職や仕事はどのようにして決まるものなのかなどが、門外漢にも理解できるように書かれてあって、著者の文章の組み立て方の巧さに舌を巻いた。
よく、現代の学問は専門が細分化されていて、総合的な問題に対処できないという言説を聞くけれど、薬を作ったり、天気や地震を予測したり、コンピューターを改良したりするのは、細分化されたひとつひとつの小さな発見の積み重ねなんだなあ、と思った。