2001年宇宙の旅

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
 「後世に残る作品を作ろうぜ」と言って、本当に作っちゃったキューブリックとクラークに一番驚く。
クラークのすごいところは、SFや科学知識のない人間にも読みやすく、分かりやすい言葉で、最高級のSFマインドを伝えているところ。それにしても、宇宙飛行士になろうかって人の探究心は、私のような凡人には恐ろしくすらある。後半の気が遠くなるような酩酊感といったらなかった。
 冒頭、クラークによって、小説原作の映画化でもなく、映画のノベライズでもないという本作の微妙な成り立ちが説明されている。この作品は、映画との関係を抜きにしては語れないということは理解したので、読了後に映画を観た。が……「傑作とナントカは紙一重」。途中で何度も意識を失いかけた。何が起こってるのかさっーぱりわからんのだもん。登場人物は、感情の起伏がほとんどなくてロボットみたいで、すごくこわかった。唯一エモーショナルな盛り上がりを見せるのは、ハルの助命嘆願のシーン。存在を消されそうになったとき、「やめて、やめてください」と叫ぶハルだけが、この無機質で冷たい映画の中で、命の温かさを感じさせてくれた。
 「殺人機」だけど、ハル9000が人気のある理由がすごくよくわかった。