マッドメン

MUD MEN 最終版 (光文社コミック叢書SIGNAL)
 『ユリイカ』特集で、何度も言及されていた代表作。これは読まなくては、と思っていたちょうどいいタイミングで、完全版が発売された。こういうのもシンクロニシティっていうのかな。諸星大二郎のストーリー漫画は、昔『暗黒神話』を読んでさっぱりわけが分からなかったせいで敬遠していたのだけれど、それは、ある程度の基礎知識みたいなのがないと理解しづらかっただけで、そこを超えるとすごく面白い。短編として読ませる「天国の鳥」の話が、諸星大二郎らしいユートピアの話でよかった。あと、後半、波子が女神に近づいていくときに、文明の象徴である衣服がだんだん少なくなっていくんだけど、パプアニューギニアの衣装の下が、普通のブラジャーなところに、作者の妙なこだわりを感じた(笑)。
最近の作品である「栞と紙魚子」が、クトゥルー神話を知らない人でも楽しく読めるのは、諸星大二郎のストーリー作りが円熟の域に達したせいかな。いい感じに肩の力が抜けてきたんだろうか。