無面目・太公望

無面目・太公望伝 (潮漫画文庫)
 『ユリイカ』2009年3月号の諸星大二郎特集に触発されて、未読の作品を読みたくなった。混沌というと、私は『山海経』の翼の生えた超絶可愛い生き物を連想するのだけれど、『無面目』の混沌は、天地の始まりから存在しているくせに、人間の男の姿をしている。それは、「混沌に九穴を穿つと死んでしまった」という短い伝説を、「人とは何か」というテーマで語りなおすために、諸星大二郎がきかせたハッタリなのだ。私は、諸星大二郎のこういう壮大なハッタリと、南極老人みたいなひょうひょうとしたキャラクターが好きだなーと改めて思った。