文楽につれてって!

文楽に連れてって!
 文章があまり上手じゃなくて、読みづらかったが、文楽初心者には、歴史や勘所をかみ砕いて説明してくれていて、分かりやすかった。文楽というと、江戸時代からずーっと庶民の娯楽の王道で、今のような形が伝統として脈々と受け継がれてきたと思いがちだけど、そうでもないんだなー。
文楽最初の黄金期は、1746(延享三年)から1748年(寛延元年)にかけて、三大名作が誕生した頃で、この前後は、豊竹座と竹本座が張り合っていわゆる「歌舞伎はなきが如し」の状況だった。それが、歌舞伎に娯楽の座を取って替わられ、江戸時代においてさえ、後半は娯楽としての文楽は低迷していたんだそうだ。それが、明治になって文楽座を中心に復興、それも度重なる火事や戦争で、人も物も打撃を受け、戦後に起こった派閥争いでほとんどとどめを刺された形になっていたのを、国が保護するようになったのが、現代私が見ている文楽、ということになる。
知らなかったといえば、近松門左衛門が活躍した時代には、文楽(という言葉はまだなくて正確にいえば浄瑠璃)はまだ一人遣いで、三人遣いが完成したのは近松の死後というのも意外だった。この頃は浄瑠璃(つまり語り)がメインで、人形は挿絵のようなもの、という比喩には、なるほど、と思った。
伝統芸能というと、過去が固定されているような印象を受けがちだけど、常に時代の影響を受けて変化し続けている。今私が文楽を見ていることも、その変化の流れのささやかな一部なんだなあと思うとなかなかに感慨深い。