首無の如き祟るもの

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)
探偵役がほとんど出てこない(そう、「ほとんど」…ね)んだけど、それがかえってよかったような気がする。「厭魅」が読みづらかった原因の一つに、登場人物に感情移入しにくいという点があった。この作者の文章は、非常にロジカルなので、登場人物に共感してどうこう、というメンタルな読み方が難しいんだな。それがこの「首無」では、叙述する人物を「作家」にすることで、作中叙述者と、作者と、読者の登場人物たちへの距離感が、見事にシンクロして違和感がなかった…と思う。
そういう「読みやすさ」が保証されると、このシリーズの特色であるミステリーとホラーが混然一体となった面白さが、素直に楽しめた。特にあの終わり方はいい。今まで散々巡らせてきた伏線がミステリー的にもホラー的にも一気に収束していって、やられた! と思った。