厭魅の如き憑くもの

厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)
 「民俗学の知見を生かしたホラーっぽい本格ミステリー」は大好きなテーマの一つですが、今まで手が伸びなかったのは、著者のデビュー作「ホラー作家の棲む家」があんまり怖くなかったせいなんですよねー。
 …うん、やっぱりこの人の文章、怖くないや。
 葬儀の日に親戚のうちに泊まった男の話とか、「三つ首の木」の由来とか、一つ一つの怪談は結構怖いんだけどなあ。話が長くなると、とたんに怖さが薄れるのは、著者特有のロジカルな語り口によって、「状況を理解する」ことに注意がそれてしまうせいじゃないかな、と思いました。静江消失の謎なんて、「人がいなくなるわけがない」という状況を「分かる」のにさんざん苦労したせいか、「なるほど!」と思った時点で、すっきりしちゃって全然怖くないという(笑)。
 本格ミステリーとしては、すごくよくできた寄木工芸を見ているような感じです。でも、この作品なら、家系図だけじゃなくて、絶対地図があるはず!と思って、カバー裏まで覗いたのに、なかった…。
 しかし、作品ごとに趣向を変えているようなので、シリーズを続けて読んでみようかと思います。怪談話を聞くと性格が変わるという探偵の性癖は面白いので、もうすこしキャラ立ちするまで追いかけてみよう。