東京おぼえ帳

東京おぼえ帳 (ウェッジ文庫)
 『蘆江怪談集』の解説を読んだらむらむらと読みたくなったので、図書館で借りてきました。戦前には新聞に花柳演芸欄なんて記事があったことからして新鮮です。今でいう、三面記事、ゴシップ記事に当たるのかな。文章があまりに恬淡としていて品がいいので、今のスポーツ新聞や週刊誌とは簡単に比べられないんですけれども(^^;。一番違うのは、文章云々もさることながら、記事にする人物への深い敬愛の念が感じられること。生臭いはずの男女関係やお金の話も、この人の手にかかると、人間味のあるあたたかな逸話に聞こえてくるから不思議です。
 歌舞伎と中心とする演芸界や、いわゆる芸者さんが活躍する花柳界という、漫画やドラマを通じてしか知らない世界が、非常に具体的に描かれていて、長年のもやもやがずいぶんすっきりしました。でもやっぱりもう意味が全く分からないところも多々ありますね。「左褄をとる」の意味ですら、辞書を引かなければ分からない…。