算木の家

算木の家
 大正時代の山形県、上杉藩の旧藩士の家に生まれたりつは、家に伝わる先祖の道具を見ながら、過去に思いを馳せます。
 作中現在と過去の切り替えがやや唐突でとまどいましたが、すぐに算術をめぐる雪国の人々の物語に引き込まれてしまいました。
 書方の家に生まれながら、算術にひかれ、やがてその才能を認められて仕事をするようになった江戸時代の源太郎。明治になり、新しい学問を学ぶために師範学校にかよったりつの父信吉。かれらのなした仕事はささやかですが、学び、学んだことを生かすという、地道な喜びが素直に伝わってくる佳作でした。