155オタバリの少年探偵たち

オタバリの少年探偵たち (岩波少年文庫)
 「野獣死すべし」を書いたイギリスのミステリー作家の児童文学ということですが、私はこの著名なタイトルを読んだことがないので、勝手にハードボイルドでバイオレンスな作風の人だと思い込んでいたので意外でした。…もしかして大藪春彦と間違えてる?
 さて、勘違いは置いといて、本作は、オタバリという小さな町で起こった犯罪を少年たちがひょんなことから暴いていくという「エーミールと探偵たち」系統のお話です。校舎の窓ガラスを割ってしまったニックを救うべく、みんなで集めたカンパ金が無くなってしまい、保管を任されていたテッドに疑いがかけられます。テッドの無実を信じる友達と、横領の証拠を押さえようとするライバルたちの行動が、いつのまにか町のチンピラの犯罪を探り当ててしまい…というもの。
 テッドに敵対するトビー少年の行動が意外な伏線になって、テッドの無実を証明するなど、物語の仕掛けのうまさもありますが、どちらかというと推理よりは手に汗握る冒険と少年たちの対立や友情に主眼が置かれています。なかでも、テッド少年を、最後まで信じぬく小さなニックの義侠心には心を打たれます。「飛ぶ教室」の禁煙先生のような信頼に足る大人が登場するなど、随所にケストナーを想起させる個所があるのですが、両者に影響関係はあるのでしょうか。
少年たちの戦争ごっこから連鎖的に話が転がっていくテンポの良さや、少年たちの伝記作家としての役割を担う隠れた主人公「ぼく」という構成の巧みさなど、手堅く読ませる良作でした。ところで、「野獣死すべし」は本当はどんな作品なのでしょうか。

はしっこでうろうろしていないで、話のどまんなかに飛びこんでいけ。