154シュトッフェルの飛行船

シュトッフェルの飛行船 (岩波少年文庫)
 著者は、「魔の山」(読んだことありません)を書いたトーマス・マンの娘でドイツの作家です。シュトッフェルはクリストフの愛称で、貧しいボート番の息子クリストフ少年が、アメリカで成功した叔父に生活の援助を求めて飛行船に密航するというお話です。
 飛行船に乗るまでに紙の半分を費やしているので、肝心の飛行船に乗っているシーンが非常に短いのが何とも残念でした。巻末に天沼春樹氏による「もうひとつの飛行船ものがたり」という解説があるのですが、これが解説の枠にとどまらず、年若い読者と飛行船の魅力を分かち合いたいという並々ならぬ情熱が伝わってくる名エッセイで、非常に読みごたえがあります。これを読むと飛行船に乗ってみたい、もっと詳しく知りたいという思いで胸が熱くなるので、なおさら、作中で飛行船乗組員たちの働きや船室の様子をクリストフ少年とともに体験したかった! と思わないではいられません。飛行船のコックさんや若い乗組員のゴッケレさんや船長さん、アメリカで友達になる新聞売りのジャッキーなど魅力的な登場人物も十分に活躍しないままなので、全体にこの倍の分量があってもいいと思いました。

 暗号なの…シュトッフェルはオーライなの。