153美しいハンナ姫 

美しいハンナ姫 (岩波少年文庫)
 ポーランドの昔話をモチーフとした物語集で、お話はだいたい3パターン。他者への思いやりにいちじるしく欠ける悪人が改心する「美しいハンナ姫」「ヴォイテックの冬作物」と、己の身勝手さのなれの果てに悪人が身を滅ぼす「王女さまの手箱」「若かったわたし」、善人が報われる「盗人のクーパ」「クリーメックの息子」。
 昔話は、あくまで題材にとっているだけらしく、近代精神を持った著者の思想がどの作品にも色濃く反映されています。それが端的に表れているのが、ハンナ姫やヤドヴィカ姫、ヴォイテックなどの欲深く自分勝手な人物たち。極端なデフォルメは昔話の特色といえますが、昔話の悪役と違って、彼らの所業にはほんとに腹が立つんですね。これは、登場人物の造形に血の通う個性が与えられているからだと思います。
 また、怠けものを動物に変えてしまう魔女である一方、人々に助言を与え、導きもする森の「賢い」夫人(「ヴォイテックの冬作物」)や、悪魔と取引をしながら、天使のささやきに負けて失敗を繰り返す司令官(「クリーメックの息子」)など、昔話風の世界を舞台に、二面性をもっていたり、葛藤をしたりする個性的なキャラクターが登場し、一風変わった雰囲気を醸し出しています。これは、ポーランドというお国柄なのか、作者の個性なのかわかりませんが、なかなか興味深い作風でした。

大きくなったら、おいでなさい。もっとさし上げましょう。