149ぼくと<ジョージ>

ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)
 「ぼく」のおなかの中には、幼い頃から<ジョージ>という男の子がいて、ぼくたちはいつも一緒だった。ジョージは、口は悪いけど記憶力がよくて、テストのときはいつも協力してくれる。ぼくたちはうまくやっていたんだ。ぼくがウィリアムと友達になるまでは。
 いわゆる「二重人格」なのですが、そういうレッテルを貼るのがいやになるくらい、ベンジャミン(ぼく)とジョージは魅力的な少年たちです。とくに肉体を持たないながら、観察眼が鋭く、切れ者の<ジョージ>はほんとかっこいい。
 おとなしくて思索的なベンジャミンと、攻撃的で独立心旺盛な<ジョージ>、対照的なふたりの意見が対立することで、ベンの中に嵐が起こります。読者には、ベンが友達になりたがるウィリアムが嫌なやつだということが分かるので、<ジョージ>の的確な突っ込みに共感し、ベンにイライラするのですが、これは作者の計算なんだろうなあ。だからこそ、その<ジョージ>が一時いなくなってしまって、ベンが自分で考えるようになるくだりに、爽快感があります。おとなしく見えたベンが、ウィリアムが何をやっているのか分かってからは、滅茶苦茶をやりだすから、本当にびっくりしました。

ときには気にくわない理由が百もあり、好きになる理由はひとつもないようなやつがいる。それでも好きになるやつ。