148グリム童話集下

グリム童話集〈下〉 (岩波少年文庫)
 身もフタもない登場人物がいる一方で、ロマンティックな話もあるのがグリム童話ですが、中でも私が好きなのが「六羽の白鳥」です。人から白鳥へと変身するメタモルフォーゼの魅力もさることながら、約束を守り通す妹のけなげさや、王と妹の愛情の深さなど、全体的に昔話としては乙女ちっくなのがいいですね。
 「六羽の白鳥」の王は聡明なイメージですが、一方でいいところが全然ないのが「かしこいお百姓の娘」の王様。この王様、吹っかけた無理難題を解いた娘を王妃にするのですが、王に背いた家臣をたすけたかどで、娘と追い出そうとします。その時にひとつだけ一番大事なものを持ち出すことが許された娘は、王に薬を持たせて連れ出すんですよね。「わたしには、あなた以上に大事なものはありません」なんて言って。えええ〜どこがいんだよ、この王様の! と盛大につっこんでしまいました。
 また、昔話に兄弟が出てくるとたいてい仲が悪かったり、兄が意地悪だったりするのですが、この作品集では仲のよい兄弟が協力して困難に立ち向かう話がけっこう多く収録されています。これは選者の趣味でしょうか。なかなか新鮮でした。 

「わたしは役たたずで、せいぜい長ぐつを頭になげつけられるくらいしかできません」