147グリム童話集上

グリム童話集〈上〉 (岩波少年文庫)
 グリム童話の結末は、「めでたしめでたし」で終わるか、ひどい目にあって終わるかの両極端だという思い込みがあったのですが、意外ともとの木阿弥に終わる話もあって、よく知っているつもりの話も読み返すとおもしろいなあと思います。
 愚か妻が次々と財産をなくしていく「フリーダーとカーリーヒェン」は、愚かですが愛嬌のあるカーリーヒェンと、怒りつつもフリーダーを見捨てないフリーダーの掛け合い漫才が楽しいです。最後は大金持ちになるのかと思いきや、自分たちの財産を取り戻すだけのつましい結末なのも、この夫婦らしいなあとほっこりしました。
 「猟師とおかみさん」は、女房の要求がエスカレートするにつれて、背景の海の様子が変わっていく描写が細かくて好きです。家が欲しいと言っていた頃は、透きとおって穏やかだった海が、皇帝になりたいと言い出す頃にはぶくぶくとあわ立って荒れていくという…魚の様子が変わらないのが余計不気味。こちらも、神になりたいとまでの欲をかいたわりに、元どうりに戻るだけというのでちょっと拍子抜けする感じですが、そこがいいなと思います。

「なくなったものは、なくなったものだわ」