146雨の動物園 私の博物誌

雨の動物園―私の博物誌 (岩波少年文庫)
 舟崎さんの作品はエッセイに限らず、どうもこう、なんとも言えないざらざらとした違和感を感じます。熱狂的なファンがいる一方で、苦手だという人も多い作家ですよね。私にとっては、苦手でありつつもその違和感に奇妙にひきつけられる不思議な作品群を書く人です。
 幼い頃から動物と関わるのが好きだった著者が、動物との思い出をつづったエッセイです。好きといってもカエル爆弾などの遊びも含めてですが(笑)。多くのエピソードの中でも、傷ついたヒバリを放すくだりは、とても印象的でした。幼鳥の頃から飼っていたヒバリが瀕死の怪我を負ってしまい、せめて最期に大空を飛び回って欲しいと野生に返すのですが、一方で「われながらなさけないひとりよがりの願いだった」という著者。ペットに対してどのような選択をしても、結局は独りよがりなのでは、という疑問を持ちつつも、動物とかかわり続ける著者の、「業」のようなものを感じるほろ苦いエピソードです。
 克彦少年がどのような選択をしようと、動物たちの気持ちが分からない以上、独りよがりのそしりは免れません。著者は、欺瞞に陥ることを自分に許さず、分からないものは分からないまま描いています。動物に同情しすぎずに、あくまでも「ヒト」としても視点を持ちつづけるところに、著者のいさぎよさ、立ち位置の確かさを感じました。

<1日も早くひなではなくなってつばさをもつ>ことであった。