マイナス・ゼロ

広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)
 古典SFを読もう第4弾。
 もっとクールな話だと思いこんでいたら、三丁目の夕日的なノスタルジーに満ちたタイムトラベルもので面食らいました。舞台は、戦時中、復興期、昭和初期と移り変わっていきますが、その当時の世相を盛り込んで、知っている人には懐かしく、知らない人にはものめずらしく感じられると思います。
 しかし、ちょっと私には合わなかったかなあ。出会って3日で32歳と17歳が…ってちょっととんとん拍子すぎやしませんか!? 著者は女性心理におおらかすぎる。それともヒロインがさばけてるの…?しかも、著者のおおらかさはこれにとどまらず、ラストの顛末にはのけぞりました。そっかー、近親<貞操なのかー。子どもは実の子でなくても良かったと思うんだけど、ヒロインは絶対に主人公と結ばれないといけないのね…これって、なんてライトノベル? 主人公がモテモテといい、初恋の人と結ばれることといい、おじさんのライトノベルって感じがしましたよ、イテテ、石を投げないでください。すみませんってば。
 日本が誇る傑作SFに暴言の限りを尽くしている自覚はありますが、思い返せば私はもともとタイムトラベルものがあんまり好きじゃないんでした。『夏への扉」』も『時をかける少女』も、『タイムリープ』もなんとなくもやもやした読後感だった。あまり考えて本を読む方ではないので、タイムトラベルものの醍醐味であるカタルシスが少ないからだと自己分析しています。映像作品の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とか「時をかける少女」は好きだし、小説でも「グリーンノウ」とか「トムは真夜中の庭で」とか「思い出のマーニー」とかは好きなんだけどなあ。