武士道シックスティーン

武士道シックスティーン
 剣道に命をかける、熱血スポコン少女磯山香織と、父のリストラにより日本舞踊を続けられなくなってなんとなく剣道を始めた「お気楽不動心」少女西荻早苗の高校部活動物語。磯山香織ちゃんの、強烈なキャラクターに最初から笑いが止まりません。お弁当を食べながら、鉄アレイで筋力トレーニング後、「五輪書」を熟読する女子高生なんてありなのか。自分にも他人にも厳しい香織が、分かりやすく壁にぶち当たって、迷走しているところは、ちょっと寂しかったです。まあ、いきなりクラスメートを突き飛ばして、手を踏んづけるのはやりすぎですが、次巻では元の元気を取り戻して欲しい。
 日本舞踊で培った安定した腰の動きと、生来のおっとりした性格で香織を振り回す早苗ちゃんに和みました。小柴先生といい、香織の性格の元凶とはいえ一芸を極めた桐谷先生といい、竹刀屋の蒲生さんといい、周囲の大人も香織のことを気にかけてくれて、なんかもう本当に気持ちのいい小説でした。
 剣道のことはとても分かりやすく書かれていますが、試合シーンの迫力は「鹿男あおによし」に少しまけるかなー。しかし、暗い警察小説を書く人だと思いこんでいた作者が、こんな王道の爽やかな青春小説を書くとは思っていませんでした。女の子たちの書き方にも嫌みがないし、引き出しの多い、うまい作家さんだと思います。セブンティーンも期待!

「いやぁ、けっこうピリピリした、危険な関係だと思いますけど」