145風の妖精たち

風の妖精たち (岩波少年文庫)
 「風の妖精たち」「池と木」「ナニナの羊」「ジプシーの杯」「声を失ったオスマル」「雨の乙女」「農夫と土の精」
 まさに、フェアリーテイルと呼ぶのがふさわしい、神秘的な美しさに満ちた掌篇集でした。
 昔話のお約束として「○○してはいけない」という禁忌を、いつ破ることになるかとひやひやした「風の妖精たち」と「雨の乙女」は、まったく対照的な結末を迎えました。「風の妖精たち」のように、ギリギリまで人間側が試されるというのは、産業革命の頃のイギリスの作家らしい斬新な解釈だと思います。伝統的なフェアリーテイルのイメージを踏襲しつつも、楽器が人間に変化したり、池と木が恋仲になったり、雨の化身が娘になって人間と暮らすという独特のイマジネーションと、オリーヴ・コッカレルの幻想的な挿絵がとても良くあっています。


おまち! いま、のぼってゆくから