遊郭のはなし

遊郭(さと)のはなし (幽ブックス)
「赤い櫛*女中のはなし」「死化粧*技夫のはなし」「八幡の鏡*女将のはなし」「紙縒の犬*内芸者のはなし」「幽霊の身請け*幇間のはなし」「遣手猫*客のはなし」「無常桜*遣手のはなし」「紅葉狩り*禿のはなし」「木魂太夫*花魁のはなし」「手鞠*地回りのはなし」

 遊郭を訪れる客が、遊郭に生きる様々な人物から、遊郭にまつわる怪談話を聞き取る連作短編集。遊郭の風俗描写が細かく、丁寧に書かれている。遊郭なだけあって、闇の描写にも華麗で艶がある。
ひとりが一話というわけではなく、とりとめなく語られるものもあり、「怪談文学賞」は伊達ではないと思わせる。冒頭の「赤い櫛」にはぞっとしたが、バラバラだった怪談話が徐々に櫛の因縁に収斂していく後半がお見事。

階段の櫛に背を向けて、振り向いて見た張見世の、畳の上にも赤い櫛―それも一枚だけではなく、二枚、いえ、三枚…