綺想迷画大全

綺想迷画大全
 「西遊記」研究で知られ、小説家でもある中野美代子のアートエッセイ。「綺想」なだけあって、日本ではあまり目にすることのない世界中の奇妙な図象が美しいカラーで収録されている贅沢な本でした。口の中に宮殿を入れる白き猿神の渦巻き模様にぐるぐるし、写字生のいたずら書きににやりとし、宋代の物売りの絵の細密さにワクワクしました。悪魔と天使が白蛇を綱引きしながら海をかき混ぜるという壮大なイメージを紹介した後で、「バリ島の人々は、こうして、今でも海をかきまぜているわけです」と結ぶ飄々とした文章で、高度に知的な内容なのに、するすると読めてしまいました。それにしても、果物として樹に「生る」美少女(もいで「妻」として使用できるが、一週間たつと腐ってしまう)って、秋葉オタクも真っ青なすごい妄想だなあ。