121名探偵カッレくん

名探偵カッレくん (岩波少年文庫)
 エーミールに続く岩波少年探偵もの第2弾。 
 探偵小説の好きな主人公のカッレくんは、ときどき空想の中で名探偵ブルムクヴィストになりきって、これも空想の「聞き手」(ワトソン役ですね)に様々な推理を披露するのが趣味(註:ブルムクヴィストはカッレくんの名字。スゥエーデンの名字は覚えにくいけど、これはなんかクセになる)。この設定で引き気味になりますが、まあ12歳の男の子だし、ちゃんと現実と空想の区別をつけていることがすぐに分るので、気にならなくなります。それどころか、だんだんこの名探偵の登場が待ち遠しくなってくる…第一部のブルムクヴィスト名探偵のラストシーンは、にやりとさせられる名台詞でした。ヤングレディ!
 現実世界のカッレくんは、親友のアンデスエミリー・ロッダと一緒にいたずらや戦争ごっこをして遊んだり、家の手伝いや学校の宿題やらをぶつくさ言いながらやってたりする普通の男の子です。そのなかで、隣に住むエミリー・ロッダの家に転がり込んできた「おじさん」の言動から、犯罪の匂いをかぎつけて、真相に迫っていくのですが、一見、主軸のストーリーには関係ないような日常生活の記述が、あとになって重要な伏線だったり、犯人逮捕の大きな手がかりになったりするところが見事でした。児童文学の名作として知られる本書が、一行として無駄な記述がない上質のミステリーであることに驚かされます。
解説は映画監督の山田洋次