竜が最後に帰る場所

竜が最後に帰る場所
風を放つ 迷走のオルネラ 夜行の冬 鸚鵡幻想曲 ゴロンド
 期待にたがわず、また、別な側面を…でも恒川光太郎以外の何者でもない作品を見せてくれました。
 今回は連作短編ではなくて、五編それぞれ毛色が全く違います。「夜行の冬」は『風の古道』みたいな、現実世界のすぐ隣にある異世界の通り道が舞台のちょっと怖いお話。「鸚鵡幻想曲」は、『南の子どもが夜いくところ』みたいな、南国風の…恒川さんのイマジネーションが炸裂した不思議なお話。「ゴロンド」は、幻想SFとでもいうのかな? 人間やアンドロイド以外の異生物を一人称にするSFがあって、そんな感じだと思っていたら、風景が一気にファンタジーになってビジュアルがとても美しかった一篇。
一番読後感が気持ち悪くて印象が強烈だったのは、「迷走のオルネラ」。正義って気持ち悪い。
 装丁は、バラエティボックスみたいな本書の内容によく合っていると思います。目次の下にある挿画をアイコンみたいにしたものも可愛い。