燃えるスカートの少女

燃えるスカートの少女 (角川文庫)
 堀江敏幸氏の解説が、この短編集の読後感を丁寧にすくいとっている。こういう奇妙な、としか言いようのない「感じ」を、なんとか説明しよう、伝えようとして、言葉を駆使できる人を尊敬する。あと、訳者の日本語の選び方も、とてもうまいんじゃないかと思うんですがどうでしょう。訳によっては、作品世界をぶち壊してしまうだろうけれど、この日本語によって、魅力が増大しているようにすら感じてしまうマジカルな言葉遣い。「私は泥棒に恋し、彼は私を仕事に連れていった。」の一節なんて、どのようにでも平凡に訳せそうなのにねえ。文庫版についている挿画も、雰囲気にぴったり。
さびしいのに、あったかいのか、さびしくて、あったかいのか、よくわからないけれど、読んでいる間、うっとりとした気持ちよさに浸されていました。