ヴォーリズ建築の100年

ヴォーリズ建築の100年―恵みの居場所をつくる
 ヴォーリズの名前は、行きつけの病院のホームページで知りました。建物の設計者の名前を誇らかに記載してあって、病院を決めるときのささやかな肯定要素にもなったのでした。
 カラーの写真で代表的な建築をその設計図とあわせて紹介している上、コラムも充実していて、入門書にはぴったりでした。
 阿川佐和子がエッセイを寄せていて、母校で手すりを滑り降りた想い出を綴っています。その想い出と響き交わすように、「ヴォーリズの階段」というコラムには、手すりにまつわる微笑ましい推察がされていました。そこで言及されていたウサギとカメの彫刻があるのが豊郷小学校。ネットで調べてみると、校舎取り壊しで町長と反対住民が対立したことで全国で有名になったこの建物も、耐震補強を施して保存され、2009年5月に図書館として生まれ変わったという嬉しいことが分かりました。さらには、アニメ「けいおん!」の舞台になっていたことまで分かってもうひとつびっくり。
 この本を読むと、普段自転車で通りすぎているあの建物もこの建物もヴォーリズの建築であることが分かります。東華菜館も大丸心斎橋もそうだったとは。こうやって、ヴォーリズの建築をめぐって、次々と発見があるのは、彼の作品が本当に人々の身近に、生活の中にあるからなんだなあ。座談会では、情熱的な伝道者でありながら、冗談が好きだったりしたユニークな人物像が語られていて、ますます親しみを感じました。
 それにしても、家族分の手当が付いて、残業は一切なしという会社は羨ましい、入社したい。正社員になるには洗礼を受けないといけないし、仕事にはかなり厳しそうだけどね。