綺譚集

綺譚集
 いろいろな文体で書かれた実験的な幻想小説集。化け物視点の「夜のジャミラ」「玄い森の底から」が、暗闇を掻き分けて現世をのぞき見しているような奇妙な愉しさがあったので、すき。「美しい話だ」と始まる「約束」よりも、この作品集では珍しく淡々とした味わいのある「脛骨」のほうがうつくしいです。あと、読後感はあまり良くないけれど、どうしても「黄昏抜歯」が印象に残ってしまった。幻想小説的には、庭に魅入られて次々と男たちが命を落としていく「ドービニィの庭で」が起承転結もきっちりしていて読み応えがありました。