怪異の風景学 妖怪文化の民俗地理

怪異の風景学―妖怪文化の民俗地理
 怪異が起きる「場所」は地域社会の境界である、というのは民俗学の本で読んだことがあります。本書では、高知県の首切れ馬伝説を題材に、同一地域の別共同体における伝承の違いから、地理的に怪異が起きる背景を読み解いていきます。切り口は大変面白く読めましたが、著者の事象の解釈の仕方が、なかなかに独創的なので、しばしば論旨の展開についていきづらかったです(^^;。
 伝統的な地域社会の対比として、現代都市社会を扱った7章以降では、都市社会における「伝承」として映画を取り上げていて、最初は違和感がありましたが、その共同体が共有できる「物語」という意味では「伝承」にあたるものかもしれないと思い直しました。映像作品で怪異が起こる「風景」として近代化遺産が多く映し出されている、という指摘は、新鮮でした。
 「千と千尋の神隠し」が詳しく論じられていたので、久しぶりに見たくなってDVDを借りてきたら、例の赤い画像でがっかりしたというのは余談です。