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さいごの戦い―ナルニア国ものがたり〈7〉 (岩波少年文庫)
 読み始めてしばらくしてから、私がこのファンタジーの金字塔を敬遠していた最大の理由を思い出しました。「はるかな国の兄弟」の時も思ったんですが、主人公たちが、ゆきて帰らない物語というのは、置いてけぼりになった感が強くて、読後とても寂しくなります。スーザンが、ナルニアの友でなくなってしまったのも寂しい。私は、自分がナルニアの友であると自信を持って言えないから、こんなに寂しくなるのかもしれません。
 作者がなぜこの結末を取ったのかは、まだ意図がつかめません。いつか理解できるようになれればいい。自分にとって謎のある物語は、再読の楽しみのある物語でもあります。
 最後の戦いは、今までで最も暗くて陰惨な戦いでした。悪が卑小な分、身近なものに感じられて、読み進めるのがつらかったです。作者持ち前の、カラッとした語り口でなければ投げ出してしまったかもしれません。最後は、真のナルニアへと解放されたとはいえ、私たちの世界からはよほど隔たってしまったようで、最初にも書いたとおりとても寂しい読後感でした。
 シリーズを構成するにあたり、ナルニアの創世と終末を続けて持ってきたのは、対比が際だつという意味で上手いと思います。「魔術師のおい」では今までのシリーズで読者が親しんだものの起源が語られ、「さいごの戦い」では、懐かしい友に再会できるので、やはりまずは、発表順に読むのがいいと思いました。

 7年前に「指輪物語」を2ヶ月かけて読んでいる間、日常生活を送っていても、心のどこかが中つ国にあるような錯覚を覚えましたが、今回もそれに近い感覚でした。『夜のピクニック』では、高校生の忍が、中学生の時に読まなかったことで「しまった」と言っていましたが、私にとってナルニアを読むべき時は「今」でよかったと思います。実際に、小学生の頃読みかけたときはちっとも面白くなかったのだし。こないだ、テレビで放映された映画も見ましたが、私の中のナルニアの方が、ずっと美しく楽しいところで、映像化されたものにそれが打ち消されなかったのも嬉しかったです。