怪談列島ニッポン 書き下ろし諸国奇談競作集

怪談列島ニッポン 書き下ろし諸国奇談競作集 (MF文庫 ダ・ヴィンチ ひ 1-1)
恒川光太郎弥勒節」(沖縄)、長島槇子「聖婚の海」(愛媛)、水沫流人「層」(広島)、有栖川有栖清水坂」(大阪)、雀野日名子きたぐに母子歌」(福井)、黒史郎「山北飢談」(神奈川)、加門七海日本橋観光」(東京)、勝山海百合「熊のほうがおっかない」(秋田)、宇佐美まこと「湿原の女神」(北海道)
 編者あとがきに「平成の「諸国奇談」小説集」とあるように、執筆者ゆかりの地を舞台にしてあります。加門七海有栖川有栖といった中堅から、「幽」怪談文学賞や「てのひら怪談」でデビューしたばかりの新人までで、執筆者は様々でしたが、新人さんの話にも面白いものがあって、収穫でした。
勝山海百合「熊のほうがおっかない」。タイトルからではどんな話かさっぱり分かりませんが、ツーリングの青年が訪れた宿で、地元の老婆の話を聞いた夜、不思議な体験をする、というストーリー。仲居さんが「オバケよりも熊のほうがおっかない」というように、怪異がとりわけてセンセーショナルに語られないのがかえって良かったです。私も、孔雀荘に泊まって、アサヒさんの話を聞いてみたいなあ。夜の露天風呂には絶対に近寄りませんけどね。
 有栖川有栖清水坂」。新本格のミステリ作家は、怪談やホラーが合わないんじゃと思っていたのですが、これが意外とよかったです。「プリンセス・トヨトミ」でも舞台に取り上げられていましたが、上町台地の付近というのは、坂が多くて独特の雰囲気があります。