妙心寺展 京都国立博物館

 禅宗は、ほとんど仏像を拝まないらしく、替わりに非常に写実的な禅僧の坐像がありました。木像なのですが、生きているみたいで、なかなか格好いい。仏像の人間離れした美しさもいいですが、理想的な知性や慈愛を人間の顔立ちに写してある肖像にも、独特の良さがあります。奈良の鑑真和上展にも行ってみようかな。
 楽しかったのは、マンガみたいな筆致の白隠の戯画でした。「すたすた坊主」の楽しそうな笑い顔とか、ぎょろりとした目玉の達磨とか、のびやかでとってもおもしろい。白隠の手になる「法具変妖之図」という妖怪絵巻もありました。百鬼夜行絵巻の系統に連なる図柄で、小松和彦の「百鬼夜行絵巻の謎」を思い出します。だいたい見たことのある絵でしたが、蓮の葉の下に白狐らしいが隠れているのが意味深でした。「白蔵主(はくぞうず)」っていう僧侶の格好をした狐の妖怪に似ているような…。
 「老梅図襖」は、不自然な角度で折れ曲がる梅の枝が、大迫力。「日曜美術館」で、龍にたとえられていたのも納得です。
 妙心寺は、豊臣秀吉の保護を受けていた関係で、第一子棄松の遺品も伝わっていました。「玩具船」は子どもが実際に乗って遊べるくらい大きなもので、車輪がついていて人が引いて動くようにもなっています。また、小型武具もありました。こちらは、50cmほどの小さなもの。ふたつありましたが、大きさが少しちがいます。幼い子どもはあっという間に成長するから、その都度作ったのでしょうか。秀吉の財力に感嘆するとともに、秀吉が親馬鹿ぶりがダイレクトに伝わって微笑ましいと同時に胸が痛くなりました。小さな武具は2つ作られたきりで、それより大きなものが作られることがなかったんですから。