江戸歌舞伎の怪談と化け物

江戸歌舞伎の怪談と化け物 (講談社選書メチエ)
 江戸歌舞伎の怪談ものを題材に、怪談・化け物・幽霊を多角的に論じた一冊。江戸時代のメディアミックスの盛況ぶりや、「母性」から見るフランケンシュタインとお岩さんの比較論など、切り口が多彩で飽きませんでした。
 書籍になっているだけあって、全体的に読みやすいのですが、「うさこちゃん」やスヌーピーの例示はやや柔らかすぎて浮き気味かなあ。子どもの文学やサブカルチャーにも目を配っているのは好感が持てるのですが、前後のつながりは薄い感じがします。
 江戸から明治へと時代が変遷する中で「刑部姫」が「恋する妖怪」としてとらえなおされた過程はおもしろかったです。こんな感じでメディアミックスという視点から江戸と現代の妖怪事情を比較したものが読みたくなりました。