japan蒔絵展 京都国立博物館

http://japan-makie.jp/
 大学に入学して初めて行った大規模な展覧会が、1995年10月に京都国立博物館で開催された「蒔絵−漆黒と黄金の日本美−」でした。それから本格的に展覧会に行くようになったので、同じ京博で蒔絵の展覧会があるというのは、何か感慨深いものがあります。
 蒔絵という工芸の、漆の黒と金の対比は実に美しいと思います。今回の展示では、金箔張りの棚に飾られているものもありましたが、黒が引き立ってちっとも下品になりません。その蒔絵が海外で「japan」と呼ばれているのはなんだか嬉しい。
 主に海外での評価に焦点を当てて年代順に展示してあるので、時代の作風がよく分かりました。たとえば桃山時代南蛮貿易の蒔絵は、バーン!とかドーン!とかの少年漫画的効果音が似合いそうな派手さで、天下取ったるで!とか、地の果てまで布教に行ったるで!というようなイケイケな人たちの無駄なパワーに溢れています。一方で、江戸時代の大名やヨーロッパの王侯貴族が愛したものは、同じようにキラキラしていても、洗練されていて優美。輸出が限られていた江戸時代、蒔絵はヨーロッパで珍重され、多くの貴顕がコレクションしました。著名な収集家別に作品を展示してあったので、コレクターの趣味や好みというものを感じることができます。マリーアントワネットは、文様の細かい小さな容器が好き、ドイツの王さまは文様が大きくはっきりしたデザイン的なものが好きというように、こういう「人」が見えてくる展示の仕方というのは、とても面白いです。そういえば、博物館の建物を生かして、中央にある天井の高い広間を、ヨーロッパの宮殿に見立てて、大型家具を展示したアイデアもいいと思いました。
 多数出展されていた、箱の中に小さな箱がいくつか入っている沈箱という香を入れるための容器は、形や細工もさまざまで目を奪われました。特に、蓋にリスが描かれた籠目文様の容器に、木の実の形をした入れ物が入っている沈箱が可愛らしかったです。あと、蒔絵によくあう螺鈿細工も多数出品がありましたが、屋根から下がる瓢箪の実と敷石に螺鈿を施した家型の香炉がきれいでした。