コロー展 神戸市立美術館

 この展覧会があるまで知らなかったのですが、チラシの女性像がきれいだったので、興味を引かれて見に行きました。19世紀イギリスで風景や人物を描いて人気を博した画家だったそうです。
 私は、絵から物語が読み取りやすい幻想的なものや、歴史画、静物画が好きで、肖像画や風景画は今まであまりじっくり見たことはありませんでした。でも、コローの作品は、なんと言うことのない風景画なんですが、初夏や晩秋の晴れた日に外に出たときのような清涼感があって、思わずじーっと画面を凝視してしまいました。中でも「緑の岸辺」という作品を一番長く見ていました。深い木立の中を、一本の小川が流れていて、その岸辺で少年少女が遊んでいます。画面いっぱいの緑の影が、優しく包み込んでくれるような安心感を与えてくれる絵でした。
 風景だけでなく人物も、透明感があって、清潔で、とても美しいものがそこにあると思わせてくれます。「真珠の女」などは、わざわざ前をはだけるように描き直したと言うことでしたが、ちっともいやらしくない。
 展覧会の趣向もよかったです。コローに影響を受けた作家や、同時代の画壇でコローと共通した作風の作家の作品を、コローの作品と並べて展示することで、コローの特長や、風景画の鑑賞のツボが見えてくるようになっていました。モネや、ルノワールセザンヌマティスなど、錚々たる画家の作品が並んでいて、驚きました。風景画は、画面の構図を分析すると面白そうでしたので、今後風景画を見る機会にはよく見てみようと思います。今回の作品では、留学先であるイタリアを描いた画面の右手前に、草花の生えた崖を描いて臨場感と全体を引き締める効果を出している絵は面白いと思いました。