酔郷譚

酔郷譚
「桜花変化」「広寒宮の一夜」「酔郷探訪」「回廊の鬼」「黒い雨の夜」「春水桃花源」「玉中交歓」 
 慧君とのつきあいは結構長い。はじめて東京駅前の八重洲ブックセンターに行った高校生のとき、あんなにたくさん本が並んでいるのをはじめて見た私は嬉しくて舞いあがってしまい、何か記念になるような本を買おうと色々見て回った…その一冊が『幻想絵画館』だったというわけだ。それからも、倉橋由美子の作品は、読破するほどはまったわけではないけれども、新刊が出れば気にかかり、興味がありそうなら読んでいた。そしてときどき慧君の物語に出会った。この『酔郷譚』も慧君が出てくるとは知らずに手に取ったもので、内容を知らずに読むことがほとんどなくなってしまった今となっては、これは慧君にふさわしい再会の仕方ではないかと思う。慧君のははぎみは先年寂光土へ旅立ってしまい、慧君の成長を記すことはかなわなくなってしまったけれど、こうして彼岸のかなたから、この美しい装丁の本を送ってよこしてくれたことに感謝したい。


そこで慧君は一休さんを迎え入れて子供が生まれるためのことをした。