平台がおまちかね

平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)
 てっきり威風堂シリーズかと思い込んでいたので、カバー見返しを見てずっこけました。一見爽やかで善良そうな好青年が、新米出版社営業として東奔西走する日常の謎系ミステリーです。
 出版社営業は、本に携わる人の中でもあまり知られていない仕事なので、井辻くんの仕事内容を追体験するだけでも楽しかったです。仕事の裁量の幅が広いっていうのは、大変そうでもあるのですが。初々しいけど、井辻君はなかなかのやり手なんですね。地方書店と東京からの営業との関係が興味深い「絵本の神さま」と書店の企画が秀逸な「ときめきのポップスター」がよかったです。「輝け! ポップスターコンテスト」は本当にわくわくする企画なので、どこかのリアル書店がやってくれないものでしょうか。営業さんのお薦めってだけで、目先が変わってていいと思うんですが。三浦綾子『母』と筒井康隆『旅のラゴス』を読んでみたい。

全国を渡り歩き、さまざまな書店に顔を出しているように見受けられる営業は、あたかも野を越え山を越えやってくる旅の行商人だろうか。みんな生の情報を渇望している。このままで終わることなど誰も望んでいない。