138ふたりのロッテ

ふたりのロッテ (岩波少年文庫)
 サマーキャンプで出会ったうりふたつの女の子、ロッテとルイーゼ。ふたりは、自分たちが小さいころ、両親の離婚によって離ればなれになったふたごの姉妹だということを知る。大人の都合で、姉妹がいたこと知らされていなかったなんて! ふたりは、その秘密を探るために入れ替わって暮らすことにした。
 ほんとにもう、ケストナーって気持ちがいいなあ。健全な道徳が、飄々としたユーモアでくるまれて、読み終えると、背筋がしゃんと伸びると同時に、ほっこりとあたたかな気持ちになれます。
さて、この作品の一番のわるものは、ロッテに意地悪をする継母的なイレーネ嬢ではなくて、ロッテとルイーゼの父親、ルートヴィヒ・パルフィー氏です。氏は、作曲に打ち込むために離婚し、娘の悲しみをモティーフに作曲して満足するような人で、まったく、「大男でもだれでもいいのだが、ときどきパルフィーさんのお尻をひっぱたいて」くれればいいと、私も心から思いました! 多少のフォローを加えるなら、パルフィー氏は、明るく積極的なロッテに大変好かれているのではありますが、子供じみて自分勝手なんです(あ、フォローになっていない)。最終的には、このダメな父親と、しっかりもののふたごと、賢く優しいケルナーさんがそれぞれ支え合い、譲り合いながらともに暮らすことを選ぶのですが、子どもをしあわせにするのも、不幸にするのも、大人なんですよね。
 しかし、この話のキモは、そっくりなふたごが入れ替わることから起きるドタバタ喜劇だとおもいます。まるでゲームのように情報を交換して、ピンチを機転で切り抜けていく展開が面白いです。その中で、はじめて出会うお母さんとの暮らしに感動するルイーゼの心情がいじらしく描かれているのが、ケストナーの筆のうまいところでしょう。
その太陽は、ものみなすべてをあたためる。いい人も悪い人も、どっちつかずの人も、わけへだてなく。