黒い玉 十四の不気味な物語

黒い玉 (創元推理文庫)
 ルドンの表紙こえー。こういう内容にぴったりな芸術作品を表紙につけられると、本の造形そのものが愛おしくなります。デザイン考える人は、内容読んでふっと連想した作品を使ったりするのかしら。楽しいだろうな。
 表題作はさすがの不気味さ。オチは、「ああ、あの形ね」というよくあるパターンなのですが、あのはじまりであのパターンに落ち着くなど予想不可能で、「こうきたか!」という新鮮な驚きがありました。物語の型が出尽くしても、料理法によってどんな新作でも作られ続けていくのだと思うと、嬉しくなります。「父と娘」や「謎の情報提供者」のように、人間の悪意が凝って非日常的な不気味さをただよわせている作品もしみじみとよかったです。ブラックユーモアの効いた「売り別荘」も大好き。