135牛追いの冬

牛追いの冬 (岩波少年文庫)
 ランゲリュード牧場の両親は農場の仕事で忙しいので、オーラたちは、子どもたちだけで仕事の手伝いをしたり、遊んだりします。それが、死んでもおかしくないくらい危険なことが多い。エイナールなんて、すくなくとも5回は死んでます。こんなにほったらかしでいいのかと心配になるのですが、これは現代日本の感覚なんでしょうね。
 無鉄砲なエイナール(だけではないですが)をハラハラしながら見ていて、映画「天空の草原のナンサ」で6歳のナンサがひとりで放牧の仕事を任されていたのを思い出しました。だだっ広いモンゴルの草原で、ナンサは家畜といっしょに迷子になるのですが、こんな小さな子から目を離していいの、というカルチャーショックを受受けたのを覚えています。「ナンサ」も「牛追い」も、物語なので子どもたちの命は助かるのですが、運が悪ければ死んでしまったことに変わりはないわけで、そういうある種の思い切りの良さを、子どもを見守る大人たちから感じます。放任しているわけではなくて、見守っているけれども、ある程度のところは神様とか大自然にまかせてしまっている感じ。
「牛追いの冬」では、末娘マルタの病気あり、オーラの初恋の少女インゲルの家出ありと、「小さい牛追い」に比べてドラマチックな要素が多く、テンポよく読めました。読み終わってみると、なかなかおもしろかったと思います。でも次はファンタジーが読みたいな…。