131星の林に月の船声で楽しむ和歌・俳句

星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句 (岩波少年文庫(131))
 詩人の編んだ、大変可愛らしい詩歌集です。短い解説に鑑賞のツボがきちんとおさまっているところや、線と面を効果的にあしらったデザイン的な挿絵に、清少納言が「うつくしきもの」と評したちいさいものの愛らしさを感じます。本の作りは可愛らしい一方、収められている和歌や俳句は、恋や人生の寂しさを扱ったものも多く、可愛いだけの内容ではありません。『梁塵秘抄』以外は馴染みのない中世の詩歌である「靨(えくぼ)の中へ身を投げばやと 思へども 底の邪が怖い」なんて、七、七、五、七の最後字余りの部分が、江戸時代の粋に通じる洒脱な感じがします。構成が、天平時代、平安時代、鎌倉・室町時代、江戸時代、明治以降という章立てなので、時代ごとの作風の変化がつかみやすいのもありがたいです。
昔の詩歌に触れたのは、中学生の時だったと思いますが、人生経験が乏しくても、詩にこめられた「気持ち」はなんとなく分るんですよね。時をこえて生き残った洗練された言葉には、個人が経験したことのない心を呼び覚ます力があるというか。