124秘密の花園上

秘密の花園〈上〉 (岩波少年文庫)
 読み返してみると、改めて冒頭のシーンのあまりの非道さに戦慄します。9歳の少女がネグレクトのあげく、コレラで家族が死に絶えた屋敷にひとりぼっちで忘れ去られていたのですから。最初に読んだとき、論評されているほど、メアリは「児童書らしからぬ、かわいげのない子ども」には見えないと思ったのですが、メアリの生い立ちをさっ引いて読んでいたからだと思います。こんなひどい虐待を受けてきた子が、天使みたいに可愛くなくても、全然構わないよ…! メアリの内に閉じこもりがちな寡黙な性格は、かつて「本を読むことだけが好き」だった子どもには大いに共感できるところがあります。
 「お母様」やクレイヴン氏の子どもの扱いは、現代から見ると深刻な児童虐待に見えますが、当時の上流階級においては、常識の範囲だったのだろうと思います。実際に、ミスルスウェイト屋敷においても、メアリーは放置されてしまうのですが、世話係のマーサがヨークシャ育ちの物事にこだわらない性格だったおかげで、世界を広げていくことができたのでした。