バケモノの子 2015

魅力的なキャラクターと、美しい映像をもってしても、クライマックスに至る色々なもの足りなさを補えず、楽しめませんでした。
登場人物の言動や表情、声優さんの演技や美術さんの描く物語世界でちゃんと伝わることまで、すべてセリフで説明されると、興ざめしてしまいます。


冒頭、レン(=九太)は、母親を亡くして、父親は行方不明、引き取り先の親族からは逃げ出して、いわゆる「居所不明児童」になります。
しかし、そこまで親族を嫌うきっかけのシーンがないので、逃げ出す彼の気持ちに寄り添えないんですね。
この後も、なかなか九太の心の動きが理解できない、ついていけないシーンが続きます。

なんといっても、クライマックスで九太(=レン)とぶつかる一郎彦の描写が圧倒的に足りない。
一郎彦の弟、二郎丸は、個人的には可愛くて好きなのですが、九太と友達になるのは一郎彦にして、二人の関係性をもっと強く結んでおいたほうが、九太が一郎彦のもとへ行く説得力が増したのでは、と思ってしまいます。
そもそもが、一郎彦を追い詰めたのは、父をはじめとする家族の問題なので、クライマックスシーンに猪王山一家がいないのは、不自然でした。
渋天街から出てこられないのなら、一郎彦を止める力を持つのは宗師だけ、というところで、猪王山が勝負に負けたがために息子を救う力がないことを嘆いて、熊徹に託す、というシーンがあってもよかったような。
一郎彦の「心の闇」(=穴)を埋めたのは、いったい何だったんだろう?


すべてセリフで説明してしまうので興ざめと書きましたが、キーワードである「心の闇」という言葉も、これをそのまま劇中で使うかー、と思いました。
全体的に練りが足りなくて、キャラクターの行動や感情に説得力を感じられず、ほとんど物語に入れませんでした。

時をかける少女」では、前半の真琴の「バカ」さ加減が、後半のひたむきさに転嫁して、納得と感動を得られたんですが、本作にはそのカタルシスがなかったです。