竹本義太夫三百回忌追善・竹本義太夫墓石修復資金勧進特別公演 国立文楽劇場

なかなか鳴り止まない拍手。
会場を満たす、文楽愛する人々の熱い思い。
こんな素晴らしい舞台に居合わせることができて、とてもとても幸せです。


用明天皇職人鑑 / 花競四季寿 〜万歳・海女・関寺小町・鷺娘 / 「ファン感謝祭」義経千本桜 〜すしやの段〜


  


チケットを切ってもらって、ロビーに入ると、そこには技芸員さんがズラリと並んで自らパンフレットを渡してくれました。美しい文楽人形もお出迎えしてくれて、希望者は一緒に写真を撮ったり、人形を持たせてくれます。フロアは人であふれかえり、報道のカメラも見えました。普段とは違う、お祭りのような雰囲気で、いやがおうにも気分が高揚します。


そしていよいよ幕が開き、能舞台のような「用明天皇〜」が始まったのですが…すみません、あらかた寝てしまいました。でも、「花競」の前の技芸員さんのご挨拶からは、ちゃんと起きていられました。昨年体調を崩された住太夫さんのお姿を拝見できてよかったし、関寺小町でお声が聴けたのもよかった。海女のタコはユーモアたっぷりで、文楽の楽しさを再確認しました。


しかし、やはり、何よりすごかったのは、「三業さかさまにて相勤め」たすしやの段! 「ファン感謝」にしても程があるほどの無茶ぶりで、場内は爆笑に次ぐ爆笑、配役が交代するたびに、拍手が起こり、声援が飛ぶ。川原泉『銀のロマンティック…わはは』に、主人公たちがエキシビジョンで男女逆のパートを滑るエピソードがありますが、あんな感じです。


女形のお里と若葉内侍は、きっとうまい人をあてたんでしょう、それなりになんとか様になっていたのですが(それでも後半お里は固まってましたが)、維盛卿がひどかった!!(爆笑) 首が、首がずーっと天井を眺めていて、まるでポカーンと口をあけているよう。景時の意を察して出家を決意し、数珠で体を清めるシーンでは、見事にバチコーンと、顔に数珠をヒットさせていました。あと、袈裟が袈裟懸けになってませんでしたよ…。
六代君も、ずっとうつむいていて、やっと立ち上がったと思ったら、宙に浮いてるし。
いやあ、それにしても足遣いも左遣いも黒子でなしに顔を出しているせいか、舞台がぎゅうぎゅうのすし詰め状態でした(すしやの段だけに!?)。


浄瑠璃うなっている人も、演歌だったり、力みすぎだったり。そして、マイクを使っている人も多かったですね。本業の太夫は、普段マイクなしで会場に声を届けているわけで、これはどの配役にも言えることで、あたりまえですけど、プロってすごいっっと思いました。皆様、完全に笑いを取りに来ていて、吉本から借りてきたような素っ頓狂な裃をお召しでした。
あと、さらっと市長への皮肉織り込んでいませんでした?(笑)


そして、この抱腹絶倒の舞台を支え切ったのは、三味線を弾いた豊竹呂勢太夫さんでしょう! 普段から習ってらっしゃるんでしょうね。呂勢太夫さんがいなければ、このアイデアはきっと実現しなかった。


そして、幕が下りた後、割れんばかりの拍手はいつまでも鳴り止まず、技芸員さんが再び客席をぬって舞台の前に現れてくれました。豊竹咲寿太夫さんのブログによると、ロビーで客が出てくるのを待っていたのを、鶴澤清介さんの提案で急遽戻ってきてくれたそうです。
もうもう、私も、手がしびれるほど拍手しましたよ!


私にできるのは、公演を毎回見に行くぐらいですが、この素晴らしい芸能を未来に残せるように、微力ながら応援し続けよう、と気持ちを新たにしました。


豊竹咲寿太夫さんのブログ「さきじゅびより」
http://ameblo.jp/sakiju/entry-11505699666.html