備前風呂屋怪談 湯女の櫛

備前風呂屋怪談  湯女の櫛
 最近は作風変わったかと思っていたけれど、「ぼっけえ、きょうてえ」みたいな作品をまた書いてくれてとても嬉しい。岩井志麻子女史は、えげつない暴露本からこういう上品な語りものまで芸風が広すぎてチョイスに困る。
 お藤の語る妖しの物語は、残酷な生臭い話なのに、昏くて生あたたかい母親の羊水で聞く重低音のように、どこか心安らぐものがある。この奇妙な安心感、懐かしさが怪談を「聴く」醍醐味だなあ。