ピーターラビット全おはなし集 愛蔵版 改訂版

愛蔵版 ピーターラビット全おはなし集(改訂版) (ピーターラビットの絵本)
 ピーターのお父さんが、肉のぱいにされてしまったくだりは有名だと思いますが、改めて全話を読むと、実に「食うか食われるか」の世界であることに気づかされます。ほのぼのとした美しい田園風景を舞台に繰り広げられる弱肉強食の世界(笑)。
「ひげのサムエルのおはなし」は、子猫のトムがねずみのサムエルに「ねこまきだんご」にされて食べられそうになる話で、窮鼠猫を噛むってレベルじゃねえ…! と震撼しました。ピーターの妹フロプシーの子ども達も、干し草の中で眠っているところをマクレガーさんにつれていかれたり(「フロプシーのこどもたち」)、アナグマにさらわれたり(「きつねどんのおはなし」)して油断も隙もないです。
それでも全く陰惨な感じじゃないのは、それが生命にとって「当たり前」であるという著者の冷静な観察眼と、可愛らしい美しい絵によるところが大きい。私は特に「2ひきのわるいねずみのはなし」で、ハンカ・マンカに抱かれたゆりかごの赤ちゃんの図がとても好きです。これはお話自体も大好き。ねずみたちに人形の家を荒された女中は「ねずみとりをかけますよ!」というのですが、その台詞の横には、ねずみ取りを前に、幼い子供たちにねずみとりの仕組みを教えているトム・サムの図が描かれていて、微笑ましいというかなんというか。