ルーシー・リー展 大阪市立東洋陶磁美術館

http://www.lucie-rie.jp/index.html
 陶器には珍しい、パステルカラーのポスターが素敵だったので、機会があったら行きたいなーと思っていました。でも、実は、絵画みたいにわかりやすいメジャーなジャンルじゃないから、そんなに人はたくさんいないだろう、と思ってたんですよね…。ごめんなさいでしたー!(土下座)
 なにこれ、長蛇の列! しかも、最後の週は、平日の2時間延長開館をやってたらしくて、そんなに人気があったのかとビックリです。東洋陶磁美術館に、人がこんなにいるのを初めてみたよ。


 でも、作品を見て納得。
 器にはあまり興味がない私ですら、その圧倒的な美しさに、背中がゾクゾクしました。シンプルな実用品ですが、大胆なデザインが描く精緻なラインや、色味の味わい深さ、そして、薄手で繊細な質感に惹きこまれました。
 1作ごとにじっと見とれていると、音楽が聞こえてきそうでした。基本は、ピアノやヴァイオリンなどの硬質な音、そして時には、トライアングルやシンバルなどの金属楽器の音や、深い太鼓のとどろきも聞こえます。次々と新しい技法に挑戦した作者が作りだした、さまざまな形、色、質感の器が、さまざまな音を奏でて、展示場は、まるで豊かな音が響きあう、オーケストラ会場のようでした。
 

 形も素晴らしかったのですが、ポスターを見た時からいいなと思っていた、色に驚きました。ピンク、ブルー、黄色、緑、オレンジなど、陶器ではたぶん珍しいパステルカラーの発色なのですが、パステルカラーのイメージである「可愛らしさ」はあまり感じないんですよね。例えばピンクは、バラや夕焼けのような気品を漂わせています。
 黒や白、金属の質感を持つブロンズ釉も、艶やかで、単純な色なのに見れば見るほど、美しさが増していく色でした。
 あと、溶岩のように泡立った表面を表現した器は、その荒々しい肌に、ピンクやブルー、黄緑色を発色させていて度肝を抜かれた。


 会場は、メモやスケッチをしている人がいっぱいいました。小学校高学年くらいの女の子までが、「わたしもなんか書きたい。書くものちょうだい!」と母親にせがんでいました。
 2次元である絵画でも、色合いや大きさといった点で、写真やネットの画像と、実物とは全く違って見えます。ましてや3次元の工芸品は、実物でなければ、美しさに打たれることはなかったでしょう。なんとなく時間があったから訪れた展覧会だったけど、うっかり見逃さないで本当に良かった。