卵をめぐる祖父の戦争

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
 id:teatreeさんのおすすめ。。早川ポケットミステリをずいぶん久しぶりに読みましたが、あまりの黄色に最初目がちかちかしました。翻訳ものが苦手なので、一気読みとはいかず、ちょうど作中時間と同じくらいの時間がかかってしまいました
 邦題が、「卵」という壊れやすいものと、「戦争」という破壊行為という対照的なものだったので、どんな話だろうと思っていたのですが…。昔、何かの旅番組でちょっとだけサンクトペテルブルグの包囲戦について触れられていたのを読みながら思い出しましたが、これほどの被害を出した重大な歴史的虐殺事件だったとは知りませんでした。目を覆いたくなるようなむごい出来事が続きますが、作風はからっとしていてユーモラスですらあります。主人公とその相棒との、下ネタ満載なやり取りが面白くて…。しかも、それがなぜか全然下品に感じられないところもいい。
 レフがユダヤ人であることを隠そうとする下りで、『完全なる証明』を思い出しました。まったく別の興味から選んだ本に、ソ連におけるユダヤ人差別という同じ事象が描かれていることで、遠い国の出来事が「事実」として立体的に立ち現われてきた感じがして、強い印象を受けました。