ゲゲゲの女房「ありがとう」

 正直、最終回に感動を期待してはいなかったのですが、不覚にも泣けて泣けて止まりません。もうちょっと、日常がゆっくりと続いていく、みたいな淡々とした終わり方だと思っていたので…。やられた!
 感想はまたあとで書きます。
(追記)
 常々、ドラマやアニメの最終回って難しい…と思っていて、この「ゲゲゲの女房」というドラマは、ふたりの人生がこれからもゆっくりと続いていく、という感じで淡々と終わるんだろうなーとぼんやり考えていました。
 それが、ぺとぺとさんの足音が聞こえてきて、飛び上がりました。連続ドラマならではの演出で、最初から見て来たファンに対するサービスですね。布美枝さんは思い出すけれど、茂さんは忘れていることとか、子どもの頃と違って、大人になった二人にはぺとぺとさんの姿は見えず、足音だけが通り過ぎていくっていうのもいいなあ。…と思っていたら、代表作のキャラクターが勢ぞろいで夫婦を見守っているという、ベタだけど、すとんと胸に落ちてくるようなエンディングで、じわーっと感動がわいてきました。
 毎回出て来た境港や安芸、調布の風景写真に、ふたりが映っていたりして、最後まで至れり尽くせりでした。オープニングも、ぺとぺとさんと一反木綿が出て来たのは最終週だけですよね?
 それにしても、どんなにいい雰囲気になっても、ドンガバチョ! と抱きしめたりはしないところは「ゲゲゲの女房」クオリティだったなあ。いや、最終回では、茂さんは63歳、布美枝さんは53歳なんで、そういうのを期待するのはお角違いなんですが、この二人、全然年とらないもんだから、つい…。

 源兵衛さんのお葬式は、漫画を書く茂さんを囲んで皆が笑顔だったりしてなごやかな雰囲気でしたが、貴司さんのラッパを吹いて家族を呼び出すエピソード、意外とユーモアもある人だったんだーと思うとぐっときました。源兵衛さんに関しては、倒れた時の方が大ショックでした。力のないかすれ声で、「心配せん親はおらん!」とか「枝も栄えて葉も茂る」とか言われたら、動揺しますよ。あの矍鑠としたお父さんが…。布美枝さんに「大事にね、お父さん」と声をかけられて、「はい」と返事した時に涙腺が決壊しました。その後、思うように動かない身体で(しかもパジャマで)、仏前でおばばと貴司に布美枝さんのことを頼む姿も、まるで子どもみたいに頼りなかった。誰にでも訪れる「老い」の切なさを突き付けられたようで、たまらなかったです。どんなふうになっても、わが子を思う源兵衛さんの心に、亡くなった祖父の姿が重なりました。大杉蓮さんの演技がすごかったです。

 最終週で、もうひとつの嬉しい誤算は、すがちゃんでした。ここまで時間を割いてもらえるとは!(歓喜) ぐずぐず悩んで、無断欠勤していじけてるところは、すがちゃんらしいと思いました(笑)。新人賞取った「夕顔畑に風が吹く」、茂さんが自分の体験をもとにしているって言ってましたが、もしかしていずみさんのことかなあ。でも、夕顔が実家にあったかんぴょうなら、もっと前か。
 あと、質屋の御主人が最後まで登場してくれたのも嬉しい。貧乏時代の知り合いで成功後もコンスタントに出て来たのは、浦木さんとこの人と、あとは商店街の人たちですね。茂さんが亀田さん(名前初めて知った)にも「ありがとう」というのを聞いて幸せな気分になりました。

 プロダクション設立20周年記念パーティーも、最終週らしく総出演で豪華でした。誰が招待したんだとか(浦木さん)、どうやって招待したんだとか(小峰さん)いう人たちもみんな来てましたね。アシスタントトリオが再会していましたが、彼らがいた頃が水木プロダクションの青春時代だったんだなあと思います。ところで、手塚治虫先生がいませんでした?
 緑色の太った餃子をリクエストしたり、着物を作れと言ったり、嫁入り道具の着物を着たお母ちゃんに見とれたりと、あいかわらずデレるポイントははずさない茂さん。もちろん、最大のデレは、娘たちにもらった花束を渡すところです(ニヨニヨ)。パーティーでねぎらわれて、「楽しいことばかりでした」と笑顔で言える布美枝さんの強さには、お父ちゃんでなくても惚れぼれします。

 謝恩パーティーは、アシスタントや支えてくれた家族(親族)、編集者など、作り手への感謝でしたが、そのすぐ後に、お祝いに駆けつけてくれた太一君に「読者」を代表させて「ありがとう」というこの抜かりのなさ! ドラマも視聴者に支えられているものですし、ものを作る人であればこそ、作品を享受してくれる人への思いを忘れられないんでしょうね。

 オールスターキャストにも、すべて登場する意味を持たせたところは、脚本の妙でした。素晴らしい。